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『ひーちゃん、父さん少し出掛けて来る。』

『いつ帰って来るの?』

もうすぐで毎年あるお祭りあるのに急に行く

なんて聞いてないよ!!

『うーん、気が向いたらかな?』

『お祭りは?』

一緒にお祭り行ってくれないの?

『今年も一緒に行くか?』

もちろん、一緒に行きたいよ。

父さんの肩車で一緒に行きたい!!

『うん、一緒に行く。』

『じゃあ、それまでには帰って来るから

待っててくれるかな?』

『忘れちゃ駄目だよ。

ちゃんと、待ってる。』

『約束、約束~』

能天気な鼻歌なんか歌ってる父さん。

ちゃんと戻って来てよね。

『約束ねっ。絶対に絶対だからねっ。』

すごく楽しみにしてたんだよ。

毎年その日が来るのを待ってた。

夏祭りの一週間前に父さんはどこかに

行ったっきり帰って来なかった。

またどこかに放浪の旅にでも行ったのだろう。

でも、毎日父さんが帰って来るんじゃないかって

約束したから今日こそは帰って来るんじゃないかって

ずっと待ってたんだ。

兄ちゃんには早く寝ないと良い子になれませんって

言われたけど、目がしょぼしょぼするまで起きた。

お兄ちゃんには早く寝ないと背が伸びないよって

脅されたことがあった。

すごく待ち遠しかったんだと思う。

今日はきっと帰ってくれるって毎日思った。

父さんが約束を破ったことなんてそんなに

ないからってどこか信頼もしていた。