「さーちゃん、また暴れたんだろ?
怪我はしてなさそうだな。
おじさん、ジュース買ってくるから
ここで待ってなさいよ。」
そう言って、村田が走ってどこかへ
消えた時に思い出した。
前にも日和をこんなふうに危ない目に
遭わせたことがあった。
完全にあたしのせいだと思ってる。
あの時は、確か中学に入って間もない
頃だったはずだ。
日和と同じ中学に入ってすぐにあたしに
言い寄る男が居た。
あたしはそういうのは興味がなかった。
どうせ、このあたしの性格を知ったら
みんな軽蔑するような目で見るんだと
思ったからいつも答えは即答だった。
氷点下の女王とまで呼ばれたことがあった。
それでも、日和はいつもあたしの傍にいて
くれたし、他に望むものもなかった。
だから、安心していたんだ。
その日も何ともない一日だった。
ただ、少し日和の様子が可笑しかった。
放課後一緒に帰ろうと思ったら、
日和の姿が見えなかった。
本でも返しに行ったのかなって
教室で待ってたけど中々戻って
来ることもなくて何故か嫌な予感がした。
校舎の中を隅々まで探した。
全然見つからなくて焦る一方だった。
何も言わずにこんなに遅くなることは
稀だったからだ。
男の声がすると思って3階の階段に
差し掛かる時にあたしの親友は堂々と
立っていた。
「永瀬さんと仲がいいよな?」
「ええ、それが何か?」
日和は気が強い子だ。
あたしと気が合うのもそういうところが
あるからだと思ってる。