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said:紗友梨
いつもあの子は無邪気に真っ直ぐあたしに接してくれた。
初めて会った日のことを今でも覚えてる。
日和は多分花壇で会った時が初めてだと思うけど、
あたしはその前に一度だけ日和のことをふと気に
止めたことがあった。
あの日は確かムシャクシャしてた。
隣街の見知らぬ男の子に喧嘩吹っかけられた。
もちろん、このあたしが負けることなんてなかったけど、
その頃はとにかく荒れてたと思う。
人生で一番嫌な時間を過ごしていた。
永瀬の道場娘でその名は結構通った。
ある程度、強い自信もあった。
父さんがすごく強くてそんな父さんはあたしにとって
すごく自慢でもあった。
暑苦しいけど、一番ってぐらいあたしのことを
心配してくれてた。
あたしは家族には恵まれてた。
友達はとことん最悪なほど恵まれなかった。
それでも、家族が居るからそれでいいやとさえ
諦めてたところがあった。
遊びに誘われてもあたしを倒せば箔がつくからって
喧嘩させられて正直グレる寸前だった。
女だからってナメられてた。
だから、周りにはあたしを怖がる子か
試合に挑んでくるヤツかズルしようと
するヤツぐらいしか居なかった。
友達には諦めもあって一生居なくていいやって
ずっと思ってた。
そんな時、向かいに変わった女の子が居るって
お兄ちゃんが言ってた。
すごく可愛いけど中々笑わないんだとかいうお兄ちゃん
はよくその子の家に遊びに行ってた。
その子のお兄ちゃんと仲が良かったみたいだ。