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「どこからツッコミ入れりゃいいんだ?」
慶詩がポツリと呟いた。
「ツッコミというか普通はここでお涙頂戴する
ところなんですけど?・・・あっちの方で聞いてる
みんなの方から涙を頂戴するとは・・・・」
不良メンバーズもこっそりその話を聞いていた
のか何人かが良い話だと言って泣いていた。
「ヒヨリンとサユリンはそれだから仲良しなんだね。」
ナル君が可愛く笑う。
「はい、だから、サユとは長い付き合いになる。
サユと仲良くなったすぐ後からお兄ちゃんが急に
海外に勉強しに行ってくると言って、次々に家族が放浪
の旅に出て行って・・・サユの家族はよく心配して
くれたのだけど・・・・」
そうだ、サユと仲良くなってすぐに小学生に上がった
その年だったかな?
お兄ちゃんがリュック一つ背負って家を出た。
その2年後に兄ちゃんも自由を愛する男になるとか
意味不明なこと言って同じように出て行った。
それから、小学生高学年になる頃に父さんも、
『ひーちゃん、ジャングルが父さんを呼んでる!』
そう言って未だ帰らずってヤツだ。
あんだけ、娘と妹想いだったのにそう言ったきり
日本に戻って来ないのは可笑しな話だ。
「あたし、表情が乏しい子で中々笑わないし、
言葉づかいが可笑しいと言われてあまり友達が
出来なくて、たまに変な妄想を繰り広げることから
その後にも中学時代マコ君がお友達になってくれる
まではサユがあたしのたった1人のお友達だったといいますかね。」
妄想癖は小さい頃からだ。
よくサユに叩かれてトリップから帰還させられた。
「おめー、小さい頃から今みたいな感じだったのかよ?」
慶詩が管のプルタブを引っ張る。
「そうですが?」
小さい頃からこんな感じだった。