痛かったけど、泣かなかった。
普通の子なら泣くところなんだろうけど、
その頃からあたしはポーカーフェイスが
出来上がっていたのだ。
どんな時でもこの表情を崩すことはなかった。
全然笑わないから感情の分からない子とまで
言われたことがあった。
「何故、サユちゃんにそのようなことをさせる
のですか?」
立ち上がってパッパと砂を払った。
「サユリが悪いんだ!」
理由もなく人を傷つけるなどというのは
どうも納得がいかなかった。
「大体、この間からずっと遊ばなくなったんだぞ。
お前が居るからだな?」
そんなわけないわ。
あたしは風邪をこじらせていた。
「それはどういうことですか?」
その男の子に顔を向けようとした時だった。
男の子が思いっきり殴ってこようとした。
一瞬、目を閉じた。
殴られると人は反射で目を瞑るものだ。
「あんたたち、あたしに用があるんでしょ!?
日和に手を出したら許さない。
ボコボコにしてやる!!」
目の前に現れたサユはスーパーヒーロー
のように助けてくれたのだ。
惜しみなく出される怒涛の蹴り技に、
男の子たちは逃げた行った。
その後、兄ちゃんも息を切らせて登場した。
男の子たちに復讐といいながらまきびし
を撒いて地味な嫌がらせをしていた。
「日和、ごめん。あたしと仲良くなると
傷つけられる。」
そう言って悲しむサユの涙を見た時、
あたしは強くなろうと決意した。
「サユちゃんと同じ勲章が出来ました。
膝小僧の怪我ごときすぐに治ります。
それよりまた喧嘩をしちゃいけません。
戦闘ごっこなら日和が付き合ってあげます。」