「ひーちゃん、男の子と遊んじゃ、めっだぞ。」

兄ちゃんの心配性はその頃からである。

「違うの、兄ちゃん。日和の話聞いて。

兄ちゃんがよく遊びに連れてきてくれる

お向かいの真君居るでしょ?」

真君がよくひーちゃんって遊びに来てくれた。

クールビューティではあったけど、毎回家に

来てくれるたびそう言って遊んでくれた。

「真?」

兄ちゃんは不思議そうな顔をした。

「うん、日和ね真君の妹の女の子と友達に

なりたいの。どうしたら、お友達になれるの?」

友達なんて居たことがなかった。

だから、どうやって始めればいいか分からない。

「何だ、さーちゃんか。

それなら、兄ちゃんもひーちゃんのために

ひと肌脱いじゃうぞ。」

脱げなくていいよ。

「さーちゃんって言うの?」

名前も知らないその子に恋心のような

ものを抱いたのかもしれない。

「真の家に遊びに行く時は一緒に行くか。

兄ちゃんもさーちゃんとは仲良くしたい

んだけど、ちっとも仲良くなれないんだ。」

この人に聞いたのは間違いだった。

「けどな、ひーちゃん。

お友達ってのはなってくださいでなれるもの

じゃないんだ。いつか気付かない内になってる

もんなんだよ。」

兄ちゃんの言うことはその時難しくてよく分からなかった。

「じゃあ、どうしたらお友達になれる?」

それでも、やっぱり人生の先輩として友達が

居る兄ちゃんに知恵を借りなきゃこの難題には

手も足も出ない状況だった。

今まで、算数も国語もこの時点で理解出来ていた。

小学校に入る前なのに英語もある程度喋れた。

それなのに、問題に悩み半日もベンチで過ごした

というのは初めてだった。

そんな日はやっぱり誰かに助言を貰いたくなる

ものだった。