そんなあたしにサユが心を開いてくれるのには

まだまだ早かった。

「い、嫌よ!!」

そう言ってその日は逃げられてしまった。

公園のベンチで何がいけなかったのかしらと

半日も考えた。

帰りが遅くて心配になった兄ちゃんが迎えに

来た頃はすでに夕方になっていた。

「ひーちゃん、兄ちゃんビックリしたぞ!

いつもならもっと早く帰ってくるだろう?

何かあったと思って近所探し回ったんだぞ。」

兄ちゃんはよくあたしと遊んでくれた。

普通は同じ歳の友達と遊ぶ方がいいはず

だったのに、何の戸惑いもなく毎日ひーちゃん

の方が大事だって言ってくれた。

お兄ちゃんも中学生だったのに部活が終わると

すぐに帰って来て遊んでくれた。

嫌だって遊んでくれない日はなかった。

すごく甘やかされて育ったと思う。

兄ちゃんもお兄ちゃんも本当に大事にしてくれた。

近所は3周もして探してくれたという兄ちゃんは

この時から父さんみたいだった。

森に入って鳥に居場所を知らないかと聞いたり

するぐらいの人だった。

「兄ちゃんは友達作るの大変だった?」

その時初めて兄ちゃんの知恵が欲しいと

思ったかもしれない。

頭がいい兄ちゃんなら友達の作り方を

知っているかもしれないと思ったのだ。

「何だ?ひーちゃん、友達欲しいのか?

それなら、兄ちゃんがなってやるぞ。」

今、思うと兄ちゃんはあたしが友達を

作れないから毎日遊んでくれたのかもしれない。

「あのね、兄ちゃん。

日和ね、お友達になって欲しい子が居るの。」

兄ちゃんと手を繋いで帰路に立った時、

恥ずかしくてモジモジしながら兄ちゃんに告げた。

すごく勇気がいって兄ちゃんに言うことに

こんなに恥ずかしい思いをするなんて思わなかった。