やっぱり夏と言えばこれでしょ。
とも思ったけど、つい買ってしまうのは癖かもしれない。
毎年、懐かしくなる。
オレンジ色の液体がかかった雪のようなかき氷。
オレンジ味があると思ったらついつい買ってしまった。
昔はオレンジ味がなかったんだよね。
食べたいのにないよって駄々こねて父さんを困らせた
こともあったっけ?
そのたび、父さんは毎回同じことをしてくれるんだ。
あたしが喜ぶ笑顔を見たいっていつも言ってて、
どんな願いでも叶えてくれようとする父さんを
思い出すと買わずには居られなかった。
今思えば、父さんは父さんらしいことをしていた。
あんなに馬鹿で突拍子のないことするけど、
父さんなりに父さんだってのをアピールしてる
みたいだった。
娘はたった一人だからってすごく甘やかされた。
兄ちゃんたちにも随分と甘やかされたけど、
父さんは人一倍あたしを笑わせる天才だった。
どんなに辛いことがあっても父さん見れば
笑えたような気がする。
だから、嫌いになれないんだろう。
嫌いになる要素がちっともない。
母さんが好きだって言う父さんの魅力は
何をしても憎めないところだと思う。
結局、不良メンバーズに会えるかと思ったけど
もうどこにも居なくてまた戦場に復帰した。
スーパーのおばちゃんたちよりすごい荒波だ。
ナンパの間を素通りしたりと持っているメロン
ソーダーフロートが零れてしまわないように
死守したりとさっきよりも不利な状況は続いた。
男がうわっと言いながらぶつかって来た時は
眼力で攻めてやった。
文句が言えるほどこの状況は甘くなかった。
早くももっちとよっちゃんに可愛い子に
話しかけられたって自慢してやろうと思って
いたというのに一向に戻れる気配がなくて
フロートだって溶けちまうよって思いながら
足を動かした。