お腹空いちまったぜ。
サユのところに置き去りにしたご飯たちを
遠目に海の家に向かった。
さっきよりも何故か人が多い気がする。
人ごみに酔いそうだった。
今、気付いたけど馨君とユウヤは
あたしをガードしてくれていたのかもしれない。
さっきは2人に挟まれて喋るのに付き合って
くれたから気付きもしなかった。
実際はこんなに人がたくさん居て密着される
のがウザったくなるぐらいだった。
さりげないことこの上ない。
そんな素振りはちっとも見せなかった。
ユウヤも馨君もいつもと変わらないぐらい
普通に接してくれてたのに気付いたらなおさら
申し訳なくなった。
あたしの蕁麻疹を気にしてくれていたのかも
しれないと思うと本当に感謝しなくちゃならない
とさえ思えた。
それだから、馨君は付いてきてくれると言った
のかもしれない。
今になって気付くとか鈍感にもほどがある。
ちゃんと後で2人にありがとうって言わなきゃ。
そうじゃなきゃ、気が済まない。
人が押し返りそうなぐらいたくさん居るせいか
さっきよりも遠くに感じる。
海の家、遠いな。
さっきは何気なく喋ってたから早くついた
ように感じたのかもしれない。
1人で歩くとこんなに遠くに感じたんだ。
何か、心細さもMaxだ。
海の家にはさっきも行ったけど、
初めて行くよりもずっと緊張した。
早く行って戻りたいとも思うけど、
中々前に進めなくて波にさらわれる
かのごとく人の波に翻弄された。
ここまできたら意地でも海の家に
入ってやるぞという気持である。
人の波に負ける気はしなかった。