「千治殴られたんだろ?」

馨は冷凍庫から氷を出して袋に詰める。

「大したことねぇよ、鼻にヒビが入ったぐらい?

んっ、折れてるかもしれねぇぐらいだ。」

鼻を押さえる千治を見ると鼻が可笑しい

のは誰だって分かった。

「しばらくは家から出ない方がいいね。

見回りは美男たちに任せよう。

総長が見ず知らずの男に殴られたとなっちゃ

メンツが丸つぶれになるからな。」

馨が氷の入った袋を千治に押し付ける。

「でも、何でやり返そうとか思わなかったんだよ?」

ユウヤが千治に駆け寄る。

「写真・・・見せつけられた。

アイツの小せぇ時のだろうけど、それ見せられて

殴れるわけねぇだろ。アイツをここに置いとける

なら鼻折れたぐらいでガタガタ言ってられねぇ。

一発で済んで十分だっただろ?お前らまで殴ら

れるぐれーならこの顔面くれてやるっつっただけだ。」

千治はやっぱり裏で何かとやってんだ。

こっちが必死になってお前を守りたくても

守られてんのはいつも俺らなのかもしれない。

「ち、ちぃーっ!!」

ナルが千治にへばりつく。

ナルの頭を撫でる千治は鼻に氷を当てた。

「確かに、大事な娘をこんな不良の元に

置いておくなんて普通は思わないだろうからね。」

馨の言うとおりだ。

何をトチ狂ったらそう思えるのか、あの子にしてあの

父と言ったぐあいだ。突拍子もないこと言えるところ

から親子だとは思う。

「千治、鼻よく見せてみろよ。

お前が殴られるなんていつぶりだよ。

下手したら殴られたことないんじゃねぇか?

写真撮ってやろうぜ。」

「(一_一)/」

慶詩がケータイ持って千治の手を退かそうと

奮闘するも千治は絶対に見せることはなかった。

ウチの千治は大した男だよ。