「あ、いいよ。

そうしてくれれば、変な虫付かなくてこっちも助かる。

サユちゃんが居るけどさ、やっぱり君たちみたいなのが

傍に居た方がひーちゃんに変な虫が寄り付かないだろうしね。

ただし、ひーちゃんを傷つけるようなことしたらゴリラに

似たおじさんに追いかけ回されるってだけは言っとくよ。

俺の大事なたった1人の娘なんでね、中途半端な気持ちで

接されると腸煮えくり返りそうなんだ。」

すごい親馬鹿なんじゃないかと思うけど、

娘を持つ父親ってみんなこういうのなのかと考えた。

「それとね、迂闊に調べようとしても無駄だよ。

根回ししてあるから簡単には分かるわけない。

ひーちゃんのこと知りたいなら自分たちから

あの子をよく知ることだね。敢えて言うなら、

ひーちゃんはああ見えて難しい子だよ。」

オレンジジュースを飲み干すひよこ父。

「それでも、ひーちゃんが自然と笑顔に

なるのを見て正直悔しい気持ちでいっぱいなんだ。

おじさんがひーちゃんの傍に居てあげられないのが

もちろん悪いんだけどね、娘を持つ親になれば

分かる話さ。元々、天使のように笑う子だった

んだけどね、全然笑わなくなったのもあるから

ひーちゃんを笑わせるのは俺だけで十分だったわけよ。

だからさ、ひーちゃんのことをよろしく頼むよ。

ひーちゃんが自分からもしも弱味を言うことが

あるなら力になってやって欲しい。

それまでは待っててやって欲しい。」

ひよこ父はそう言うと千治に紙切れを渡す。

「ここに行ってその鼻診て貰いなさい。

治療費は全額こっちが出すから悪いね。

いきなり殴りかかって、次に会う時は

もう少しフレンドリーに話せるといいけどね。」

オレンジジュースのペットボトルを資源ごみの

袋に投げるとカサッと入った。

「それじゃあね。」

手を振って事務所を出ていくひよこ父の背中

をただ唖然と見つめるしかなかった。

「千治、どうなってんだよ!!」

慶詩が千治を見ると千治は、

「(-。-)」

首を傾げてテーブルにあったお菓子に手を伸ばした。