「あんた、マジであのチビの親父か?」
慶詩はそう言って疑った。
「疑うのも分からなくはないな。
ひーちゃん、中身は全然俺に似てなくてね。
しっかりしてて頭良くて何でも出来ちゃうとこ
とか冷たいところとかウチのみーちゃんそっくりでさ。
また、そこが可愛くてしょうがないんだな。」
「あの?」
「そんでもって絶対に自分のことは他人に頼んだりしない。
気が強いことこの上なくておじさん結構困ってんだな。
弱音は雷ぐらいしか言わなくて少し寂しいもんさ。」
ひよこ姫はいつだって堂々としてる。
何でも自分でやろうとする。
だから、この間だって危ない目にあった。
「あの雷の日はさ、千治君に助けられたね。
おじさん慌てて走ってひーちゃんの元に
急いだけど、中々言わないひーちゃんが
君に弱音吐くなんて何してくれたんだろうね?」
千治をジッと見るひよこ父。
「それで、ひーちゃんを危ない目に遭わせた
男が数人全治半年の怪我負わされたってのは
調べがついてんだ。まさか、可愛いひーちゃん
の仕業なわけないよね。」
あの日のことか。
確か、無茶苦茶なことしたひよこ姫が千治
の背中で力尽きて眠った後の話だな。
「ヒヨリンを殴った野郎が許せなかっただけだ。」
ナルが拳を震わせる。
頬を殴られて少しばかり震える身体で平気だって
いうひよこ姫は多分今までこんなことに遭った
こともなかっただろう。
「ひーちゃんに特別な感情でも持ってるの?」
ひよこ父は黒い笑みを残す。
「日和ちゃんは俺たちに普通に接してくれる子です。
誠意を持っても危険な目に遭わせるつもりはありません。
こっちの事情だってあまり話すつもりもありません。
日和ちゃんの嫌がることも決してしません。
信用ならないのも十分承知で日和ちゃんを傍に
置いておきたいことを頼みます。」
馨はひよこ父に頭を下げる。