「一度、ひーちゃんに気付かれないで会って

置きたくてね。この機会を狙ってたんだ。

しかし、あれだね、あのマンションで会った

サングラスのお兄さんは警戒心強いね。」

「あの、変質者ってあなただったんですか。」

馨が苦笑い気味にナルの横に腰を下ろす。

「ああ、変質者?何だそれっ、おじさんは

ひーちゃんに近付く不良ってのを確かめて

置きたかっただけなんだけどね。」

「ヒヨリンのお父さんなんですか?」

ナルが恐る恐る聞く。

「うん、似てるだろ?あの可愛い天使は

俺の可愛いくてしょうがない愛娘さ。

自慢の可愛さは世界・・いや宇宙1の可愛さ

だと言ってもいいぐらいだねっ。」

このふざけた男があのひよこ姫の?

「それで、何が目的何ですか?」

馨がスルーして確信を突く。

「いきなり本題聞いちゃうんだ?

まぁ、いいけどさ、あの北地区での

事件は世話になったみたいで助かったよ。

おじさんはひーちゃんにはまだ会えなくてね。

いや、こっそり寝顔を見に行こうとは何度も

したんだけどねぇ~。」

本当にあのひよこ姫の父親なのか疑う。

確かに、色素の薄い髪色も笑うと微かに

似ているような気もしなくはない。

「何で、日和ちゃんは1人暮らしなんですか?」

そういえば、そうだ。

日本に居ないってのは聞いてたけど、ここに

居るってことは何か事情があるのか?

「ひーちゃんには俺がまだ放浪の旅をしてる

ことになってんだな。まぁ、実際のところ戻って

きたのはここ数か月の内でまた飛ぶことになっててね。

今は砂漠でラクダとお友達になりましたってのを

この間手紙で送ったからひーちゃんの中ではどっか

の砂漠にいることになってんだな。っで、何で1人暮らし

ってのだよな。知らない内にそうなってたんだよね。」

オレンジジュースの入ったペットボトルをテーブルに置く。