千治の顔を見ると殴られたのか鼻が可笑しかった。
「お前、誰だ。」
慶詩が警戒心をあらわにしながら男を威嚇する。
「俺の顔見て何か思わないっ?」
この男ふざけてんのか?
「誰に手出したか分かってんのか?」
京が低い声で相手を圧倒させるも男はちっとも
表情変えることなくヘラヘラした。
「そりゃ、知ってるよ。
お兄さんたち結構有名だってのを俺の部下が
調べてたからね。それで、ここに居るのが
トップだってのも把握済みだ。」
その男は千治を拳銃を突きつけて指す。
千治はちっとも表情を変えないで相手の
男の言いなりになってるように見えた。
「それが分かって手を出す覚悟がてめぇあんのか?」
慶詩の声が事務所に響くと男は拳銃を千治の
頭の横でカチャリとセットした。
「それはこっちのセリフだな。
今の見て分かったらその胸に刻んでくれよ。
俺は生憎人殺しなんてするようなタマじゃないんだな。」
拳銃の引き金を引くとそこからは水が噴射した。
「あ、これね、水鉄砲だよ。
ちょっと、やっぱり怖いもんだからさ。
護身用に持ってたんだけどね、良いこと
思いついちゃったわけで決して本物じゃないから。」
その男が水鉄砲を噴射させて遊ぶと千治は
ため息を吐いた。
「馨、茶を出せ。」
千治の言葉に馨は意味が分からないと言わんばかり
に千治を二度見する。
「俺の客だ。」
千治をそういうと鼻を押さえてソファーに
身を投げるように座った。
「あ、お邪魔するね。
悪いけど俺は猫舌だから熱いお茶じゃない方がいいな。」
男が千治の向かい側のソファーに腰を下ろした。
人相から見ても決して悪そうなヤツじゃない。
年齢は俺たちより上っぽいけど、誰だコイツ。
千治の客ってのが腑に落ちない。