二人は、車に乗るとしばらく無言のままだった。

「さっきの質問の答えだけど!彼女はいないよ」

「えぇ…」

「でも、彼女も作らない主義だし、結婚もしないつもりなんだ!」

「それってプレイボーイのセリフだね」

「そんなことじゃないんだ!親父は、殉職したんだ」

「えぇ…」

早紀は言葉を失った。

「殉職した刑事の家族の思いがわかる?自分の家族にそんな思いさせたくないんだ」

早紀は田辺の優しさに触れたような気がした。同時に田辺への思いが一目惚れから本当の愛に変わっていくのを感じた。

「ごめんね!暗い話しちゃったね」

「田辺さん!私…」

「わかってるよ!気持ちは嬉しいよ!でも…」

「私、それでも田辺さんが好きです。」

「ありがとう!早紀ちゃんが、もうちょっと大人になっても今の気持ちでいてくれたらまた、考えるよ」

田辺は、そう言って早紀のおでこにキスをした。