結局、カレシとはその場で別れた。
もちろん顔を殴られた分はきっちりお返しした。
……お釣りが返ってくるぐらい。
いいじゃない別に。女の顔殴ったんだから。
過剰防衛ってぐらい蹴り続けてやったら最後は泣いてたわ。情けない。
まあでも、人の泣き顔も見れてすっきりしたからよしとしてあげましょう。
カレシと別れた足で、近所の他校生の家に寄った。
「ハチ、ハチ、マジ最高」
そりゃそうでしょう。
すっかり溺れてくれたようだから、そろそろ潮時か。
「ハッチ」じゃなくて「ハチ」って呼ぶところは好きだったけど、顔も良くないし。勉強は随分できるようだけど。
彼に一言「別れましょう」と言い捨てて彼の家を出てきた。
別れを告げたときの絶望に染まった顔が何とも言えなくて大好き、なんて陳腐な悪役のセリフみたいなことを考えながら帰路についた。