そう、彼らはアメリカ軍との共同演習でこの地に来ているのだ。

 といっても公には出来ないもので表向きは『交換留学』みたいなもの。

 実際、軍事演習というよりも武器の講習が主だったものであった。

「で、ここに何がある?」

「取引に使われているらしい」

「! 取引って、麻薬とかの?」

 時弥の問いかけにベリルは目を細めて苦い顔をした。

「それならば私が出てくるまでもない」

 ベリルの言葉に杜斗がピクリと反応した。

 こいつ……それだけの自信があるって事か? いや、実際に難易度の高い仕事が回ってくるのかもしれない。

「麻薬じゃなかったらなんだっていうんだよ」

 半ば挑発的に訊いてみた。

 ベリルは左手の人差し指を立てて2人に不敵な笑みを浮かべる。

「劣化ウラン」

「!?」

「ええっ!?」

 ウラン濃縮の際に生成されウラン235の含有率が天然ウランを下回るウランのことを劣化ウランもしくは減損(げんそん)ウランと呼ぶ。