「…希が美容師になりたいってこと、ちゃんとわかってんだけどさ……嫌なんだよな、俺としては。」



私の沈黙をどう取ったのか、かーくんはさらに言葉を続けた。



「美容師ってさ、ほら…女ならともかく…その…」



「…男のお客さん?」



だんだんとかーくんの言いたいことがわかってきて、私はかーくんの髪に櫛を通しながらそう言った。



「俺以外の男の髪は触るなって?…あははっ!」



「……笑うな。」



やっぱりそれが言いたかったらしく、私が先に言って笑うと、かーくんは機嫌を損ねてしまった。



もう…
嫉妬深いんだから─



「…考えとくね。」



「え……?」



前に切った時よりかは実習も数をこなしたし、腕は上がったと思う。



自信を持ってかーくんの髪を切りながら、私はそう言った。



「専属美容師のこと。」



「希……」



「まだ先だけどねー?」



かーくんが私とのことを真剣に考えてくれてることぐらい、ちゃんとわかってる。



でも…
焦りは禁物だよね?



ゆっくりでいいから…
この人と一緒に歩いて行きたい。