俺はカバンを持ち、教室を後にした。

 
 ――え? 俺、震えてる?


 カバンをしっかり握りしめても、その力はどこか頼りない。


 足どりだって変な感じ。


 いつの間にか職員室の前に来ていた俺は、何度も入るのを躊躇った。


「小野寺君……」


 声のする方を見ると、そこには矢野センセが居た。


 今この人の顔なんて見たら、泣きながら飛びついてしまいそうなのに。