あれから私は徹ちゃんとバスに乗った。


日曜日の朝のバスはすいていて、客は私たちだけだった。


「徹ちゃんごめんね。
塾行くのに遠回りになっちゃうね。」


「俺が恵理送るのは当たり前。
ごめんなんて言うな。」


軽くコツンと頭突きをされる。


「うん、ありがとう。」


ブー、ブー、ブー


鞄から携帯のマナーモードの震える音。


見てみると、お母さんからで、家に帰ってきたとのメールだった。


「帰ってきたんだ、予定通りか、珍しいな。」


隣から携帯を見る徹ちゃん。


髪が顔にかかってくすぐったい。


「久しぶりにおばさんにあえるな。」


「喜ぶよ。
お母さん徹ちゃん大好きだもん。」


私の両親は、産婦人科医。

職場結婚というやつだ。


出産は予定通りにいかないから、勤務表通りにはいかない。


産婦人科医が少ない今、両親は毎日激務をこなしてる。


「ほら、降りるぞ。」


徹ちゃんと手をつないでバスを降りる。


降りたバス停から、前住んでいた徹ちゃんちが見える。


私はつないだ手に力をこめる。


気づいた徹ちゃんが顔を覗き込む。


「恵理は気にしすぎ。
もう大丈夫だから。」


顔が近づき、コツンと軽く頭突きをまたされた。