徹ちゃんを見送って戻ると、お母さんが食事を続けていた。


｢相変わらずね、徹くん。｣

｢うん。｣


｢でも恵理、もし嫌なことされたらきちん言わなきゃだめよ。
｣


真剣な母親の目。


｢嫌なことなんてされないよ。
すごく優しくされてるだけ。
キスだって唇にはしないし。｣


｢もし、これから何か嫌なことされて、恵理ちゃんと言える？｣


言う？


ううん、言えない。


徹ちゃんを拒否なんてできない。


｢徹くんは恵理に依存してるわ。
恵理を通して周りと関わってる。
恵理だけが徹くんの中にいてあとの人は外側にいる。
それはもう、恵理に拒否されたら、どうなるかわからないくらい依存してる。
だから今、恵理が拒否出来ないのはわかる。
私だってあの時みたいに戻ってほしい訳じゃない。
でも、高校一年生になったこれからは少し世界を広げてもいいと思うの。
二年生になればクラスが理系文系に分かれたりするし、大学に行くにしても、就職するにしても将来をだんだんに考えていいんじゃないかしら？
恵理と徹くんのこれからを。
いつまでも二人同じではいられないのよ。｣