もし、彼と会ったとしても、すぐにまた連れて行かれてしまう。

“さよなら”を、何度もしなくちゃいけなくなる。


それが、怖かった。



『成くん、明日来るんだってよ?珠希ちゃんもおいで』

『ううん。明日は出かけるの』



いつも、おばさんの家に事前に連絡してくる施設のおかげで、私は成くんがいつ来るのかを知ることが出来た。

だからその日は、できるだけ家の外には出なかった。





「一昨年……高校を卒業した年の夏、やっと一人で帰って来れて、真っ先にタマの家に行った」


吹き付ける風から逃れる術がなくて、どんどん頬が冷たくなった。

成くんは気にしないと言うように話を続ける。あまり、聞きたくない話だ。