「どしたの、」

「んー?」

「泣きそうな顔してる」


横からひょこりと私を覗き込んでくる成くんに、笑顔を作って応える。

彼は安心したように目を細めて、視線を畑に戻した。


「10年、経ったんだな」

「私達ももう若くないね」

「だよなぁ」


一時の沈黙。

彼の横顔を見上げるけど、何を考えてるのか分からなくてすぐに逸らした。


「……毎年、」


そこで言葉を止めてしまった成くん。頭で文字を整理しているようだった。


「ごめんな、」

「なにが」

「すぐに、会いに行けなくて」



『また絶対会えるから!』



何も言わずに首を振る。

なんとなく、今は彼を見ない方がいいと思って、真っ直ぐ何もない畑を見ていた。