「あーいーちゃん、なんでそんなプリプリしてんの」
「してない。さっさと車出せ」
「……はい」
広い後部座席。先に座っていた亜衣の隣に乗り込むと、武ちゃんは眼鏡をかけてゆっくりアクセルを踏んだ。
「明日、行くんでしょ?」
「……うん、行ってみる。おばさん達にも会いたいし」
「もう、これで成のことは思い出にしなきゃだめよ」
「分かってる。あっちだって、さすがにもう来てないだろうし」
「……そうね、」
私の言葉に、亜衣は一瞬気まずそうに視線を泳がせた。
「亜衣?」
「んー?」
「いや、やっぱいい」
だけど、すぐにいつもの表情に戻ってしまったから、あまり深くは探らなかった。