「あんたも早く吹っ切んなよ。一途なのもいい加減キモいからね。変態っぽくて」


麻希の車が見えなくなって、亜衣がじとっと私を見てくるもんだから思わず目を逸らした。


「ははっ、傷つく」

「傷つくように言ってんだから当たり前でしょ」


……なんて鬼畜な。





「なーに、また成の話?」



降ってきた声に亜衣の眉間の皺が深くなった。

彼氏の顔見てその反応は、いくらなんでも酷いと思う。まぁ、言わないけど。


「遅い」

「ちょっとタマ!この鬼畜様なんとかしてくんないっ?俺、泣いちゃう」

「武ちゃん、あんたってつくづく可愛そうだよね」

「あ、分かる?」


こうして喋っている間にも亜衣はさっさと車の方に歩いていってしまう。


麻希と入れ替わるように入ってきた黒の四角い車は、いかにも武ちゃんっぽい。

この歳でファミリーカーなのは、しょっちゅうナナ達と4人で遊びに行くからだ。