眠気がピークになったナナを連れてお店を出たのは2時過ぎだった。
「よう、」
「でたな、浮気人」
「っばか、してねぇよ」
お店の前で待っていた麻希にナナを渡すと、最近買ったらしい新しい車の助手席に押し込んだ。
ちなみに、車の色はナナの好きな赤色。免許取り立てのナナでも乗れるように、敢えて軽四にしたようだった。
交際4年目。
麻希は昔っからナナのことを一番に考えるいい男だった。
「タマ、送ろっか?」
「いいよ、タマはあたしが送ってくから……さっさと寝かしてやんなきゃぐずるよ、あんたの嫁」
「うっそ!プロポーズしたの?」
「……しようと思ったら浮気騒動(これ)だから。いつまで経っても手が掛かるよ」
そう言って見せた困った顔も、どこか楽しそうだから救いようがない。
暗闇に溶けていく間際、ハザードを光らせる赤い車に手を振った。