「お帰りなさい」
「ただいまーお母さん。…あ」
「あ……」
私と目が合って気まずそうな顔をしたのは――
「姉貴…」
――――拓海だった。
そーいや拓海のやつ…
「拓海……今日、会ったとき“げ”って言ったよね?」
「…い、い言ってねーし!」
「ふーん?まっ別にいいけど〜。…あんた麻衣ちゃんが彼女だったの?」
「ああ……つーかこの前はあんがと。麻衣のやつ『リンさん素敵』ってずっと言ってた」
別に礼言われる程でもないけど……
ああいうの嫌いだしな。
「てか麻衣ちゃん、リンが私って気付いてた?」
「や、そんな感じはなかったけど。…けど、いつ気付かれてもおかしくねーよ?姉貴の名前聞いたら気付くかもだし」
「そっか。まぁ気付かれてもいいけど」