意味が分かってしまうと、震え出す。
唇も――
手足も――
あの時―――瑠美が拉致られた時とは比べものにならない。
全身が恐怖に襲われた。
私は言葉を出せないまま、時間と場所を男から指定されて――。
「わ……かった。…亜由美には…手ぇ、出すな……」
震える声で、小さく言えただけ。
笑い声を残して、通話は一方的に断たれた。
夏帆は私の様子から事を察したのか、静かに特攻服へと着替え、「行くよ…」と呟いた。
夏帆の家を出て、私の家へと歩き出す。
でも…段々と早足になって、気付けば走っていた。
少しずつ冷静を取り戻す私の思考。
それと同時に込み上げてくる怒り。
――絶対許さねぇ!!