これ以上、二人を見ているのが辛かった俺は、ソッと、その場を離れた。


いろいろと考えないように、目の前にある仕事を片付ける。

集中しなければならない事があるってのは、なんていい事なんだろう。
仮に、俺が無趣味の無職だったらと思うと、それだけで寒気がしてくる。

学生時代だったら、きっと学校を休みまくって、不登校児の出来上がりだ。
そして、有り余るパワーを夜な夜な喧嘩につぎ込んで、立派な問題児が完成される。


意外と繊細なんじゃん、俺。



そんな俺の携帯に、つららさんからメールが届いた。


『宗助へ
前の約束、覚えてる?
私がディナーを奢るってやつ。
今日の19時に予約を入れました。お店の名前はエトワール、地図は添付しといたよ。
ホント、急なんだけど、来て欲しいの。
待ってるからね』


また、携帯電話を投げそうになった。

でもここは会社で、今は昼休みの真っ最中だ。

それに、やっぱり嬉しかったんだ。

つららさんは、俺との冗談でかわしたような約束を覚えている。


なんとなく返信はできなかったが、俺は、携帯電話をギュッと握りしめた。