なにが、行かないでください、ですかっ。
白々しいっ。


脈拍数が上がっている身体を誤魔化しながら、いつもより早足で廊下を歩く。



――嘘つき。



私は、知っているんだからね。



 ―――――――――


「今日はもう、帰っていいですよ」


携帯電話を確認しながら、彼は鞄を持った。


「あ、はい。どこかに行くんですか?」


だって、今は夕方の5時。

私の、松本専用スケジュール表には、何の予定も入ってない。


「私用ですから、貴方はついてこなくても大丈夫です」


ふ〜ん、まっいいか。


「はい、わかりました」


ラッキー!
久しぶりにお店でも寄って、買い物して帰ろう。
そうそう、録画したドラマも一気にみてしまえ。


では、さよーならー。


彼よりも早く、私は会社をあとにした。