「山下さん、今日の会議の資料、10時までに用意しておいて下さい」


私は、紅茶のセットをかたしながら伝える。


「全て松本さんのファイルに転送済みです。それと、連絡を取りたいと思われる何人かのスケジュールは、調べておきましたので」


美味しい紅茶をいれることだけが、私の仕事ではありませんから。
くふふっ。


「なにか、不足しているものはありますか」


ふっふっふっ、ヤツめ。
ファイルを確認してやがる。


「いえ、助かります」


ヨシ!
心の中で、ガッツポーズを作る。


日々、優顔の悪魔に虐げられていた訳じゃないんだ。


「私はこれで失礼します、それでは」


たまには他の人と絡みたいなぁと思い、出口にむかう。


ここ最近、この部屋で仕事をすることが多かったし、そのほとんどをこの人と過ごしてきた。


私も少し、リフレッシュ。外に出て、集めたい情報だってあるしね。




「待って下さい、このファイルのここ」


え?なんかありました?


完璧にやり遂げたと思っていたのに。


私は、向きを変えて彼のパソコンに近づく。
画面を覗き込もうとした時、悪魔の手が、伸びてきた。