「やっぱり貴方は、面白い人ですね」


そっとあごに手を添えられて、クイッと上を向かされる。


「な、なんです…か」


彼の両眼と、カッチリ視線が合わさった。


「そう簡単に教えると思いますか?」


若くして、ここまで昇ってきた人だもの。
叩けば、いろんなものが出てくるのは想像がつく。



それにしてもこの人は、女の扱いに手慣れてるなぁ。

自分の価値をわかってる。

こんなことをされたら、クラクラしちゃうじゃない。


「聞けば、何でも教えてくれるって言いましたよね?」


私は顔が赤くなってしまう。


でも誤魔化されないんだから。


「色仕掛けも駄目ですか」


親指で軽く下唇を撫でられたあと、彼の手が、名残惜しそうに離れていく。



「俺は、貴方を信頼していない」


「今はまだ信頼はしなくていいです。…貴方の信頼は、これから勝ち取りますから」



初めて彼は、声を出して笑った。


こらえているのか、口に手を当てて下をむいている。


「わかりました、貴方には、顧客リストと関係者、友人リストのデータを渡しますよ」


まだ笑っている。


「可愛い秘書の頼みですから」