「頑張れよ」
ぐちゃぐちゃになった髪の毛を整えてから、宗助を見上げた。
「髪が乱れるじゃない、なんな…の…」
優しい目でみられている。
もしかして宗助も、目で人を殺すことができるのかもしれないと思った。
「俺は、お前のそばにいてやれるから」
「なんか私、宗助にはいろんなところをみられてるね。恥ずかしいとこばっかり。今更だけど、うん、ありがと」
飲みすぎたのかな。
身体が熱くなっていって、だんだんと眠くなってきた。
「宗助、本当に、ありがと…ね…」
カウンターに突っ伏しながら、うとうととまどろみの中に堕ちていく。
私の髪を、優しく撫でる感触だけが、最後まで残っていた。
その日から数日後、私に、正式な辞令がおりた。