「美波ちゃん、お願いがあるんだけど、いい?」


出勤したばかりの彼女に近寄る私。


「少し、癒しを頂戴」


もちろん訳のわからないままの彼女にハグをする、怪しい私。


「はぁ、癒されるぅ」


「チーフ、どうしたんですか?ちょ、くすぐったいですって、やんっダメっ」


世の中のセクハラおやじどもの気持ちが、今なら少しだけわかる。


美波ちゃん、ごめんなさい、ストレスって人を変えちゃうんだ。


「なんか、ヤバいですね」


後から出勤してきた新堂君は、朝から顔を赤らめている。


そうか、そうか。
君も癒しが欲しいんだな。わたしがハグしてあげよう。


美波ちゃんから離れて、モジモジしている新堂君に、ふらぁりと近付いていく。


「あのっ、そのっ」


普段はみることができない、どもる姿がたまらない。

後少しで獲物、じゃなかった新堂君に手が届くというとき、後ろから、ガッシリと手を掴まれた。


「なにしてんだ、つららさん」


振り向くと、背後に宗助が立っていた。


「癒し、発見っ」


掴まれた手を広げて、宗助をハグろうとしたが、結局、失敗に終わってしまった。


宗助のデコピン付きで。