私だけ蚊帳の外、なんだよね。


彼は何を思って私を遠ざけたんだろう。


「お前は、お前の出来ることをすればいいさ」


その時、背中をポンと叩かれた。


宗助に心を見透かされたような気がする。
でも、嫌な感じはしない。


「前から思ってたんですけど、早見チーフと山下チーフって、仲いいですよね」


「まあね、同期で残っているのは私達だけだから」


その言葉に、私は笑って答えた。


「早見チーフがうらやましいです」


「長い付き合いだからね。心強い仲間だと思っているのよ」




その時、テーブルの下。
床につけていた私の左手の上から、唐突に、キュッと宗助の手が被せられた。


私よりも、…熱い。


宗助の方を見ても、こちらを見返す事もなく普段通りに笑っている。
話し続ける佐々木君は、このことに気がついてはいない。


恥ずかしくなるから離して欲しいと思ったけど、声に出して言うことはできなかった。







「そろそろ、俺、帰りますね」


ヒヨコちゃんを見ると、針は10時を回っている。


「そうだな、明日も早いし俺も帰るよ」


その時になってやっと、私の手から、そっと手が離れた。