「とりあえずどうぞ、上がって」


車内でのそんなやりとりの後、結局、私は宗助を部屋に招き入れた。


「なに緊張してんのよ」


なかなか入って来ない宗助の態度に、私は彼の後ろにまわり背中をトンと押す。


「あ、あぁ、…お邪魔します」


意外と礼儀正しく靴を脱ぐと、宗助は玄関を通り過ぎた。


「宗助、楽にしてね。今、紅茶をいれるから」


私は、慣れた手付きで紅茶をいれる。


以前は電気ポットを使っていたけれど、紅茶をいれる時だけは、ちゃんとお湯を沸かすようになっていた。


習慣って怖い。


そう思いながら、棚に置いてある茶葉を取り出した。


「やっぱりセキュリティーは考え直した方がいいのかも」


「そうだな」


「また考える事が増えちゃったわ。宗助の方も忙しくなりそうだね」


「あぁ」


うん、香りも色も調度いい感じ。


私は、購入してからまだ使っていない、ヒヨコが描かれたティーカップに紅茶を注ぐと、宗助の座っている前にカチャリと置いた。


「このカップ、なんかすげぇな」


「可愛いでしょ、これを見つけた時、いつか宗助と一緒に飲もうと思って」


私は、自慢気に笑ってみせた。