「いぇ、いいです。すいませんでした、電話、切らせていただきますね」


宗助を待たせているんだっけ。


『冗談ですよ、よかったです、怪我がなくて』


……。
原因は貴方ですが。


『貴方は俺のものなんですから、気をつけていただかないと』


そして、松本さんの方から電話が切れた。




…なに、それ。


悪魔の嫌がらせ?
俺のものって、なに。
私を心配してくれているんだか、セクハラまがいの悪魔的ジョークなのかわからない。


何も聞こえない携帯電話の向こう側で、一体、どんな顔してそんなことを言っているの?


真意を問いただしたいと思ったけど、怖すぎて聞けないから!



秘書としてって意味なんだよね、…そうだ、そうゆうことにしよう。


私は悪魔の毒牙にかかって、自分に黒い歴史を作るつもりはないですよ、えぇ。



足の下に倒れている彼女を置いて、私は給湯室を出た。


松本さんは、こんな風に堕ちていく女の子たちを見ながら、一体なにを考えているんだろうな。



ふと、寂しい想いが心によぎった。