その日の夕方、宗助と佐々木君がお見舞いに来てくれた。


スエットにTシャツって格好が女力を下げている気がしないでもないけど、まっいいか。


私は、勢いよく玄関の扉を開けた。


「二人ともごめんね。仕事、私のせいで迷惑をかけちゃって。散らかってるけどどうぞ、入って」


玄関先で男二人が子犬のように立っている姿は、なんだか微笑ましい。



「松本さんから山下チーフが熱を出したって聞いたから。…でも、弱っている姿もなんかいいっすね」


宗助が、無言のままグーでどついた。
しかも、痛がる佐々木君を無視している。


「俺はただ、つららさんが元気か気になっただけだから、ここでいい」


そう言って、差し入れらしき紙袋を私に渡そうとしている。


――これって、有名パティシエのスイーツじゃないですか。


「俺たちは明日もあるし。これで帰るよ」


佐々木君の身体を、強引に引っ張りながら足早に去って行こうとする宗助の肩を、私はガッシリと掴んだ。

意識して、優しい笑みを浮かべてみる。


「待ちなさい。聞きたいこともあるの」




貴重な情報源、逃さないんだから。