「これで私を認めてくれたかしら」


彼女は、勝ち誇ったように私を見下した。




―――それは違うよ、鈴木さん。


私は、心の中ではなしかける。


私より頭がいいかもしれない、チーフになったら、秘書になったら、私よりも仕事は出来るかもしれない。


だけどね、貴方は他の社員に、とても迷惑をかけているんだよ?
休日に皆を出社させて、いらない心配や不審感を煽ったんだよ?


それは、会社のため、松本さんのためにはなっていないでしょう?

ただの自己満足に巻き込まれて疲れているスタッフに、謝って欲しいよ。




静かな怒りと、そこまで追い込まれてしまった恋心に哀しみが入り混じる。



「見直しましたよ。俺は、君を必要とはしません。長谷部さんは左遷、君は解雇とします。…二度と俺に会うことはありません」



松本さんはそう言って、受け取ったUSBメモリーを床に落としてから、ゆっくりと踏みつけた。


ジリジリと踏みつけた床からは、バキッっと金属が壊れる嫌な音が聞こえた…。