「ごめんなさい、晃一さん。私は、貴方に迷惑をかけるつもりはなかったの。もちろんデータをどうかしようなんて思ってはいないわ」


彼女は、この事件を起こしたことをアッサリと認めると、今度は、切なげな声で訴え始めた。


「ただ、貴方に見て欲しかった、そこにいる女より、私のほうが優れていることを知って欲しかったの。私は優秀よ、晃一さんのためならなんだってできるわ」


たしか経歴は、大学院卒で経済学を専攻していたんだっけ。

そんな人が受付けなんて、勿体無いなぁと思ったんだけどさ。


私は正直うんざりとしてしまった。


また、私が絡んでいるの?


松本さんは、私の頭をいとおしげに撫でたあと、私をデスクにゆっくり座らせる。

そして、彼女に向かって歩いていった。


「私を見直してくれたかしら」


「えぇ」


悪魔は、ただ頷いた。


「鈴木さん、そのデータを渡して下さい。もちろんコピーしたものを、全て」


彼女は、おずおずとUSBメモリーを手渡す。


「本当にこれだけですか?」


いつもより甘い声で問いかけている。
彼女はゆっくりと頷いていた。



私は、その光景をただボゥッと眺めている。