「迎えに行ったヤツがさがされているなんてな、スーツが汚れるだろ、ほら、行くぞ」


つららさんが、ぼぅっとした視線を俺にむけた。



「宗助、いたの。・・・そう・・・少しね、飲みすぎちゃったから夜風に当たろうと思って」


「一言くらい残していけ」


「うん、すぐ戻るつもりでいたんだけどね、空を見ていたら綺麗だなぁって」

「・・・お酒、美味しかったのにね」


「確かに、うまかった」


つららさんは、動こうとはしない。


「こんな所にいたら、風邪引くからな」



「うん、そうだね」


それでも、返事をしただけで動こうとしない。


「皆、明日もあるからな。戻っても誰もいないと思うぜ。つららさんの荷物を持ってきたから、このまま帰るぞ」



「えっ、解散しちゃったの?お会計とかは?」


「松本さんが払ったよ、爽やかに」


「そう、あの人らしい、のかな・・・」


その名前を出した後のつららさんの声は、緊張の色を含んでいるようにも感じた。


「やけに狭い場所で見てるんだな」


「正面にいたら、お店の人に迷惑でしょ」


そっか、つららさんは動けなかったんだ。


あの場所に戻りたくなかったんだな。