店員や客をかきわけて辺りを探したが、なかなかつららさんは見つからない。


ったく、どこにいるんだよ。


そんなに広い店内ではないが、仕切りや個室がいたるところにあるもんだから、結構いりくんでいる。


ふと、灯かり取りの窓に、つららさんらしき人影が見えたような気がした。


あの馬鹿は裏口かっ!


慌てて外に出ると、正面から奥に入った細い通路の先に、俺が探している女が見えた。



つららさんは壁にもたれかかり、建物の間から細く見える空を、ただただぼぅっと眺めている。


それは、つららさんが他人にみせない顔だ。


もちろん、俺にもだ。


泣いてはいないが、俺には泣いているように見える。

それは、涙を流して泣く姿よりも心が痛い。


この女は、こんなことまでも器用なんだな。




普段は気を張って負けず嫌いで、懸命に前を進むつららさんのこんな姿を見てしまうと、正直、抱きしめたくなる。