「とりあえずなんでもいい、市田、お前つららさんに何か言ったろ」
「さぁ、よくわからないですけど、早見チーフ、そんなに心配なら探しに行けばいいんですよ」
市田はほんわかとした雰囲気を持ってはいるが、意外と芯の強いやつだ。
「当たり前だ、松本さん、話は明日にしましょう。俺はつららさんと帰る」
彼女のバッグを持ち、俺はこの席を立った。
「気分次第ですけどね、早見チーフ、今日は楽しかったですよ」
いちいち腹が立つ言い方だな。
「頑張って下さいね、私は応援してますよ?」
市田の声を背中で聞きながら、俺はこの場を後にする。
つららさん、お前は、また一人で泣いているんじゃないのか。
頼むから、一人で抱えるのはやめてくれないか。
俺の薄汚れた下心を利用してくれていい。
頼むから、頼ってくれ。