しばらくすると、先に行っていた市田と新堂が戻ってきた。
「心配かけてごめんなさい。コンタクトがずれちゃって、痛くてなかなか取れなかったんですぅ、でももう大丈夫」
「そうだったんですね。心配したっすよ」
佐々木は、このピリピリした空気を感じとったのか、市田の姿を見て、少し安堵した表情を浮かべている。
さりげなく席を外していたあの男は、会計は済ませてありますよ、と、さも当然のように笑いかけている。
一見、優しそうな頼れる上司。
ただ、それが彼の本性だとは思えない。
・・・食えない人だ。
気にはなる人だが、それよりも今は、つららさんがいないことの方が気になった。
「市田、つららさんは何処にいるんだ?」
俺は、戻ってきたばかりの市田に問いかけた。
「おい、お前泣いてたのか?」
じっくり見ると、市田の瞳は赤く、まだ少しうるんでいた。
「だからね、コンタクトがずれたんですってば、山下秘書は飲みすぎたぁって言ってましたからどこかで休んでいるんじゃないですか?すぐに戻ってくるとは思いますけど」
市田を迎えに行ったのにか?
コイツは嘘をついているんじゃないのか?