ついさっきまでの、楽しかった空間はここにはない。


俺の心には、うすら寒い嫉妬や煮えきらない怒りといった負の感情が渦巻いていた。


新堂が、チラリと時計を見る。


「二人とも遅いですね、俺、見に行って来ますよ。時間も時間ですし、彼女達が戻ってきたら解散にしませんか」


そう言われて俺も時間を確認すると、22時を軽く超えていた。


「じゃあ、帰りのタクシーを手配して来ますね」


佐々木が席を立つ。


「迎えが来ますから大丈夫ですよ、皆さんを送り届けるよう頼みますから」


松本は、携帯を手にしながら話す。


「松本さんにそんな迷惑かけられませんって。帰りは彼女が迎えに来てくれるので、大丈夫です。佐々木と市田さんも住んでいる所が近いってわかりましたから、一緒に乗っけて帰ります」


新堂が、少し照れたように付け加えた。


「彼女さんですか、羨ましいですね」


ヤツの嘘臭い笑顔に、新堂は益々照れたような表情を深めた。


「ちょっと行って来ますね」


新堂はつららさん達が向かった先に、姿を消す。



俺は、その一連の流れをただ黙って眺めていた。