結局は、家に着くまでの30分弱、私は一言も話せないまま時が過ぎた。

緊張のしすぎなのかな、こんなんじゃあ、私、視界にも入れてもらえない。


「着きましたよ。市田さんの自宅は、このへんでいいでしょうか」


あぁ、夢の時間が終わっちゃう。

松本さん、松本さん、・・・苦しいよ。


「松本さん・・・」


「ん、どうしたんですか?」


こんなに、近くにいるんだもん。

言葉を伝えるのに、なんの障害があるの。
だって、恋愛は自由だもの。


「このままなんて嫌です。私を、恋愛対象として見て下さい」


車の中に、重い沈黙が流れる。


「貴方には、釣り合わないと思っています。でも、好きになっちゃったんです、貴方のこと、もっと知りたいの、また会いたい、会いたいんですっ」


なんにもない、なんにも知らない今の私に出来る、最大限の告白。

松本さん、なんでもいい、何か話して下さい、お願いです。
綺麗な子、可愛い子なんてたくさんいるんでしょう。
でも私、負けたくないんです。
駄目でもいいですから。




「市田さん、可愛いですね。いいですよ、俺から連絡しますから、今日はもう帰りましょうか」


夢はまだ、続くんだ。