「松本さん、今日はなんだか優しいんですね」


紅茶をコクリと飲みながら、彼の隣で仕事を続けている。

あ〜、落ち着くなぁ。
適度な甘さとまろやかさが絶品なミルクティーは、私をリラックスさせてくれる。


「私はいつも、優しいですよ」


そんなことはないですよね、どっちかって言うと鬼、ですよね。
私は彼に、不審な目を向ける。


「山下さんには、これでも充分に優しくしていると思いませんか」


思いません。
と、きっぱり言いたい所だけど、最近はなんとなく彼の優しさがわかるようになってきた。


「・・・とてもわかりにくいですけど、なんとなく」


私、よくこの人を、悪魔だ鬼だと心の中で呼んでいるんだけど、社内や周りからの評価とは少しずれているらしかった。

社内の女の子は、優し気な笑顔と柔らかい態度にキュンキュンきているらしく、モテる男で通っているし、スタッフや来客にも丁寧に接する態度には定評がある。

まるで、王子様みたいなイケメン上司と一緒に働けて羨ましい。
それが、私に対しての一般的な評価だ。

会社のトップが、優しいだけで勤まるかって。

見て、この黒さ!!
みんな、夢見すぎ、騙されまくりなんだけど。