…やっぱりこの集団は眩しかった。

「あの、遅くなってすみません」

留美達がいっせいにこっちを向く。
こっち見た優さんは心底不機嫌そうに見えた。


…ゆいとくんは怒ってない、って言っていたのに。
目が合ったのにふい、とそらされてしまった。


「お姉ちゃん、その浴衣どうしたの?」

「あ、これはレンタル」

「え?お金持ってったけ?」

「ううん、これは咲弥さんに出してもらった、なんか自分だけ張り切って見えるのが嫌だったみたい」

「咲弥さん? 誰それ?」

「あ、太郎さんなんだけど。本当は咲弥さんっていうらしくて」

「なにそれ?まぁ太郎なんて名前なかなかいないよねー。 でもいいなぁ、その浴衣すごく綺麗」

「……ありがとう」


留美の横で聞いてた信吾さんは
「これじゃ俺らが意地悪したみてぇじゃねぇか」
なんてぶつぶつ言ってる。



え?したみたい、じゃなくてされましたけど?
そう思ったけど、私はあははって笑うことしか出来なかった。

ちらっと優さんを見たけど、やっぱり目はあわなくて。
優さんは私の浴衣について、もちろん何も言わなかった。 コメントをくれたとしても可愛い、とは言ってくれないのは分かっているけれど。


咲弥さんに興味津々の留美にいろいろ質問されたけど、
変わった人とか不思議な人とかすごい偉い人とかマイペースな人とか、そういう抽象的な言葉しかでて来なかった。
あの人に、ぴったりの言葉が見つからない。

とても綺麗な人だけど留美はもう会ってるから言う必要ないし。





綺麗といえば、優さんも楓さんも綺麗だ。3人ともジャンルは違うけど。
『fiabesco』の話をしたら留美が羨ましそうな顔をした。