「もう帰るの?」

「はい」

「そっか、残念」 じゃあまた今度ね、と私を送り出す咲弥さんはあまり残念じゃなさそう。
むしろやりたかったモノポリーが出来て満足そうに見える。
その証拠にベットに腰かけたままそこから動いてくれない、せめて玄関まで来てくれたっていいのにって思うのにそこでニコニコと手を振ってる。



───友達いないとか内気だとか度々嘆いてるけど、もしかして咲弥さんに友達少ないのってマイペースで自分勝手だからじゃないんだろうか。




だけど私は、もうちょっとここに居たかった。
というより、優さん達のあの空間に戻りたくなかった。今はみんなと同じで浴衣着てるけど。

なんていうか、気が重い。
考え事をしてると早いもので、気づいたらエントランスで、当然、まだお迎えは来てなかった。


おもむろに携帯を取り出してさっき交換した咲弥さんのアドレスを見つめる。

携帯にアドレスが入ってることで、あんなすごい人が自分の友達なんだって実感する。

不思議でこんなに変な友達は初めてだったし、そもそも初めての年上の友達だし、ファンタジーの世界で生きてる魔法使いみたいに思えた。
なんていうか、雰囲気が神出鬼没って感じで、急に霧みたいに消えるイメージがあったから。

そんな、曖昧な人との形状を持った繋がりが私の手の中にある。



帰ったらなにかメール送るべきなのか、とか忙しいだろうし、止めた方がいいのかなとか、
いや、でも咲弥さんあんまり忙しくなさそう、とか色々考えた。