『…………? 別に怒ってませんよ? 何か怒られるようなことでもしたんですか?』
へ?と、電話の向こうできょとんとしてるらしいゆいとくん。
とりあえず優さん達は怒ってないみたい。
「遅いから逃げたって思ってるかな、って。」
『ん?逃げるって何からですか……?
あ、さきさん、今どこですか?暗いですし、誰かにお迎えに行ってもらいますね』
「え、いいよそんな。」
『何言ってるんですが、今日は人がたくさんいますけど……。
それに車の方が早いですし、もしものことがあれば、この前みたいに他の皆さんにも迷惑かけちゃいますし……』
他の人に迷惑……そこまで考えてなかった。
どっちにしろ迷惑をかけてしまうことが心苦しいけど、結局お言葉に甘えて迎えにきてもらうことにした。
「…じゃあ、『fiabesco』っていうホテルまでお願いしたい」
『ふぃあべすこ…ですか?』
「うん」
ゆいとくんは私よりもさらに平仮名読みだった。
『さきさん、もしかして今日泊まるつもりでした?』
驚いてるような、ゆいと君の声。
「ううん、まさか!モノポリーしに来ただけ」
「……モノポリー?」
「うん、モノポリー」
へぇ…ってゆいと君の引いてるような声が聞こえる。そうだよね。普通はなんで今日モノポリー?って思うよね。
咲弥さんのチョイスはやっぱり他の人から見ても、変わってるらしい。
気になって、ちらっと咲弥さんの方を見ると、ニコッとして口パクで
『ユ ウ く ん た ち ?』
と聞いてきた、ので首を縦に振る。
『あっ、じゃあホテルのエントランスのとこで待ってて下さいねっ』
ゆいとくんは誰かに呼ばれたらしい。私が返事する前に切れてしまった。